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35話 演技派王子の勝利と国王の譲歩

Author: みみっく
last update Huling Na-update: 2025-11-20 06:00:28

「……イヤなの? 主が困ってるのにぃ〜。へぇ……あーちゃんって、そんなやつなんだ……?」

 レイニーは、あーちゃんをからかうように、わざとらしく悲しそうな声を出した。

「当然、協力いたしますってばぁ〜。それで、わたしは……何をすれば??」

 あーちゃんは、すぐに態度を軟化させ、少し慌てたように尋ねてきた。

「護衛兵の記憶の操作をお願いねっ♪ セリオスは、俺から相談を受けてないし、見てないってさっ」

「あぁ、それくらいなら問題ないです」

 あーちゃんの声には、いつもの余裕が戻っていた。

 セリオスとレイニーの二人で、国王陛下の父に事情の説明をした。当然、国王は激怒し、レイニーは言い訳をせずに怒られて、罰を受ける話になった。

「レイニーよ、お前は……しばらく外出禁止だ。城から出ることは許さんぞ!」

 国王の低い声が、部屋に重く響き渡った。

「まさか、お父さまの王国の治安が、ここまで悪いとは信じられなくて……直接、確認に行ったのです。実際に王都の治安を守る警備兵に拐われましたし。コワイので部屋から、もう出ません……」

 レイニーは、珍しく反抗的な態度を見せず、暗い表情を浮かべた。怖くもなんともなかったが、演技で目をうるうるさせて部屋に引き篭もる宣言をして、口をとがらせてそっぽを向いた。

 レイニーは、お父さまが統治する王都を信じて確認をしに行ったら、拐われて怖い目にあったから引き篭もると言ったのだ。街を守る警備兵が今回は悪いのだから、全て責任と国王の怒りの矛先を向けさせてもらう。街の警備は警備隊長の責任なので、セリオスは関係ないので被害は出ない。レイニーは、内心で完璧な作戦だとほくそ笑んだ。

 国王がレイニーの思わぬ反応を見て、慌てた様子で困った顔をしていた。

「レイニー……そうか、悪かった。余を信じてくれていたのだな……外出禁止は取り消そう。だが、城の外に出る時はセリオスに相談をせよ。機嫌を直せ……レイニーよ」

 ん? なぜか、城外へ出ることも許されたぞ? ラッキー♪ レイニーは、心の中でガッツポーズをした。

「むぅ……。はぁい……」

 レイニーは、演技で仕方なさそうに返事をした。その表情には、まだ不満が残っているかのように見せかけた。

 その後、街の警備隊長も、その不正を容認していたことが発覚した。国王は、自身の信用が失墜したと強く感じ、王都の警備状況を抜本的に強化することを決断した。警備隊長は、本来取り締まるべき警備兵が、子供の人身売買という極めて悪質な犯罪を黙認していたことが明らかになると、即座に犯人グループと同罪であるとされ、処刑された。

 さらに彼は、騎士団で傲慢な態度を取っていた男の弟だったらしく、弟が王子誘拐という重大な事態に関与したために、一族全員が処刑の憂き目に遭った。前回の過ちで降格処分を受けたばかりだった彼は、二度目の、そして決定的な失態により命を落とすことになったのだ。

 日課となっている書庫での魔法の勉強中、レイニーは王国の歴史を綴った古文書の中に、ディアブロという名を見つけた。古びた羊皮紙には、その存在がいかに王国で暴れ回ったかを示す記述が残されている。

 (あぁ……派手に王国で暴れていたみたいね……そりゃ封印もされるわ。)

 レイニーは、ページを捲りながら納得の息を漏らした。

 ダンジョンも王国内にあるみたいね〜。危険とされて封印されたダンジョンがあるみたい……? うぅ〜ん……これ、興味あるぅ♪ ダンジョンって普通に危険な場所じゃないの? それを封印って……? 良いね良いね〜危険って魅力的な言葉だよねぇ♪

 レイニーの瞳は、好奇心でキラキラと輝いていた。未知への探求心が、胸の中でくすぶり始める。

 街の様子が変わったのかをエリゼに聞こうと思い、彼女に会いに行く途中、レイニーはエリゼが少年兵と楽しそうに話をしているところを見つけてしまった。エリゼの顔には、屈託のない笑顔が咲いており、レイニーといる時とはまた違う、年相応の無邪気さが溢れていた。

 邪魔しちゃ悪いと思い引き返す途中で、タイミング悪くセリオスとも出会ってしまった。セリオスは、普段と変わらない真面目な表情でレイニーの前に立ちはだかった。

「レイニー様、どちらへ行かれるのです? 今日もエリゼが同行をして来ていますが……」

 セリオスの声には、レイニーの行動を気にかける、いつもの親愛が滲んでいる。

「え? あぁ……忙しいみたいで、邪魔しちゃ悪いと思ってさぁ……。急ぎじゃないし、別の者にでも聞くよ♪」

 レイニーは、努めて明るく、平静を装って返事をした。内心では、なぜこんな時にセリオスに出会ってしまったのかと、舌打ちをしたくなる衝動に駆られていた。

「エリゼが、忙しいですか? 何を忙しくして……」

 セリオスが怪訝な顔で首を傾げた、その直後、レイニーの後方で少年兵と仲良く話をしながら歩いているエリゼの姿がセリオスの視界に入ってしまった。セリオスの表情はみるみるうちに凍りつき、その場の空気が一瞬で張り詰めた。そして、彼はエリゼを大きな声で呼びつけた。

「エリゼ! 何をしているんだ!?」

 セリオスの声には、怒りとも困惑ともつかない、複雑な感情がこもっていた。

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